2017年7月18日火曜日

日夏耿之介「さかしき星」「闇の化怪」

 きょうも『転身の頌』から二つ詩を読みます。

   さかしき星

すさまじき滄溟(おほわだ)に泛(うか)び漂ふ
小(ち)さく醜く古風なるわれに
さかしき星の青く淋しく揺れ揺れて
波間に泛き沈むをややながめてあれば
生命(いのち)はじじと燃え下(さが)り
水沫(うたかた)ふかく消え亡びむとおぼゆ
かかる淋しき星の稟性(こころ)よ
畏れ崇(たふと)び恋ひしたふはわれなり

   ◇

「うたかた」というと普通は「泡沫」という字を使いますが、ここではふつう「みなわ」と読む「水沫」。もともと「みなあわ」の音変化で、こちらも水のあわ、はかないことのたとえに使われます。

「滄溟」は、ふつうは「そうめい」と読んで、あおく広い海、青海原のこと。

「稟性」は、「ひんせい」、生まれつきの性質、天性の意です。


   闇の化怪

化怪(けくわい)は光れり
土蛍(つちほたる)のごとし
化怪は夥し 尽きざる也
あらゆる夢を産卵しつつ
闇の徂徠(ゆきか)ふこの夜(よる)をあゆめり
悲嘆するは何人ぞ
夜を誰何(すゐか)するあるは何人ぞ
悪(ああ) 化怪は世にみちみちわたれり
われは何故にかく夜を安臥しうるか

   ◇

「怪」とは化け物、変化(へんげ)、もののけ。

オーストラリアの洞窟などにいる、幼虫が青白い光を発するヒカリキノコバエという昆虫が「土蛍」として知られています。日本で土蛍というと、ホタル類の幼虫=写真、wiki=、中でもマドボタルの幼虫を指すことが多いようです。

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