2017年7月16日日曜日

日夏耿之介「死あらむのみ」「花の中の死」

 きょうも『転身の頌』から二つ詩を読みます。

   死あらむのみ

太陽(ひ)のもと
老幼男女狂奔(ひとびとはし)り煩(まど)ひ
吹くそよ風咳(しはぶ)きゆきすぎ
操兵の菰(らつぱ) 天心に傲(おご)りて
狐いろの小径(こみち) ひんがしに邪(よこしま)を織る
死あらむのみ

   ◇

「咳き」は、せきをすること、またはせきばらいのこと。

「菰」(こも)は、通常は、マコモを粗く編んだむしろ、こもむしろのことを指します。ここでは、兵士を訓練・指揮するラッパにこの漢字を用いています。

「狐いろ」(きつね色)は一般に、名前の通りキツネの体毛のような、薄い茶褐色を指します。


   花の中の死

朱夏(なつ)の日の後園(こうえん)に燃えたつ花は
恒にやはらぎて睡(ねむ)れる也
燃えかつ睡れるは ただ花あるのみ
日はひねもす
ものかなしき小さき花の片丘に光の塔を築く
寒風(かぜ)すさみ 日も亡びし宵(ゆふべ)
睡れる花のさなかに逝かむ

   ◇

「朱夏」は、五行思想で赤色を夏に配するところから、夏の異称として用いられます。また人生の真っ盛り、30代前半から50代前半くらいをそれに喩えていうこともあります。

「後園」は、家のうしろにある庭園や畑。

「片丘」は一般的には、一方が切り立て他方がなだらかになっている丘をいいます。

0 件のコメント:

コメントを投稿