2017年7月3日月曜日

日夏耿之介「AB INTRA」「汚点」

きょうは『転身の頌』から二つの詩を読みます。

   AB INTRA

降り積もる深雪の中の太陽より
惨死せる縞蜥蜴(しまとかげ)の緑金の屍(しかばね)より
暴風の日の林間湿地より
初夏陽炎(やうえん)の瞳の契点(さなか)より
沸きのぼれる銀光水液(ぎんくわうすゐえき)
流動体結晶の水沫(みなわ)の果
はた悉皆(あらゆる)幻覚の心なす 翼ある天童

   ◇

「ab intra」は、ラテン語で「内部から」の意味。逆は「ab extra」だそうです。

ニホントカゲ=写真、wiki=は、幼体の体色が黒や暗褐色で5本の明色の縦縞が入っていることから「縞蜥蜴」と呼ばれることがあります。


   汚点

赤き五月の満月の手綱のもと
万物は皎(ましろ)く烈しく息つかひす
連峯(れんぱう)は軟らかく小胸膨張(むねふくら)み
隠逸に足うら延ばせる大傾斜面也
瞑目(めとぢ)たる風防林の黒衣(こくえ)の裾めぐり
銀声して狂ひ奔(はし)る幽澗あり
聴け 正義に枕(よ)る水車場の雄叫(をたけび)を
色青さめ吐息する谿谷の夜風の醜状(さま)を
ああ かかる夜爻(よさり)
世界より世界を貫きて
叫(おら)び翔(かけ)る月夜烏(つきよがらす)の悲鳴と
白布(びやくふ)の汚点のごときその影と
勁(つよ)く遒(つよ)くわが心を彳立(たたず)ましむ

   ◇

「澗」(カン)は、谷、谷水のことを指します。「爻」(ギョウ、コウ)は基本的に「まじわる」の意。「勁」には、ぴんと張りつめているイメージ、「遒」には、せまる、近づいてくる感じがします。

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