2017年6月22日木曜日

日夏耿之介「非力は褻瀆也」

   非力は褻瀆也

本然のもの 身自(みづから)のもの
万法(すべて)を白金の針金もて縛(いまし)めるよかし
霊性(たましひ)の秘奥(おくが)より そこに泉のごとく
湧きいづるなにものかあり
午後一時の小雨に小濡(さぬ)れて
青春(わか)き海人(あま)も白堤(はくてい)に漁(すな)どれりけり
舞ひ騰(のぼ)る煤煙の力は大海ふかく潜(い)り
海鷗(かもめ)は檣(メイン・マスト)の上に回春の賢き夢を見む
此世界に於て われ
大地に栄えわたる神のひかりと
その孕(はら)みたる暗緑の陰影とを相(み)る
また 工場の大鉄槌(だいてつつゐ)の轟音(とどろき)と
その姉妹なる自動艇(じどうてい)のエンジンとを聴く
なにゆゑに かく爾(なんぢ)は 泪ぐめる
若く かよわき 光なき庶人(やから)よ
烏乎(ああ) 非力は褻瀆也



「褻瀆」は、「せっとく」と読み、尊いものをけがすこと、また、けがれることを意味します。きょうは、この漢字が入った題の詩です。力のないことはけがれることである、とはどういうことなのでしょう。

「本然」の読みは「ほんぜん」あるいは「ほんねん」でしょうか。自然のままで人の手が加わっていないこと。もともとの姿であること。

「白堤」は、中国の浙江省の省都、杭州(ハンチョウ)にある、西湖=写真、wiki=の人工堤防。

東の断橋から錦帯橋を通って西の平湖秋月まで、長さ1キロにわたって西湖を東西に分断する形で造られました。

古くは「白沙堤」と呼ばれ、宋時代には「孤山路」とも呼ばれました。堤防の上には外側に桃、内側に柳が植えられ、春になると桃の花の薄紅色と柳の新緑とのコントラストが美しいことで有名です。

唐代の詩人、白居易が杭州の長官だったとき、西湖の開拓と大規模な水利工事を行ったことから、後世「白堤」と呼ばれるようになったそうです。

「檣」は、音読みは「ショウ」で、訓は「ほばしら」、すなわちマストです。

「鉄槌」は、大形のかなづち、ハンマー。「鉄槌を下す」などと、厳しい命令、制裁の喩えにも使われます。



「自動艇」は、モーターボートのことです。

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