2017年6月21日水曜日

日夏耿之介「喜悦は神に」

 きょうも、ずいぶんと難しい漢字がつぎつぎと出てくる詩です。

   喜悦は神に

頑迷(かたくな)なる人の子 われに
冀くは白金(はくきん)の手斧を賜(た)びたまへ
固牢(かた)く鎧へるすべての性を脱離(ぬけい)でて
われは遙(とほ)き原始(いにしへ)の故関(こくわん)に復帰(かへ)らなむ
ああ 日輪(ひ)かがやき 雑草(くさ)の葉さざめき
渚に波の美宴(うたげ)あれど
なにものの跫音(あのと)ぞ
逝けるわが寵児(めぐしご) 白薔薇の愁訴を齎(もたら)し来るは
かつて磔刑(たくけい)の嬰児(みどりご)のごとくも
われは響音(ひびき)ある泪もて雙瞳(ひとみ)を洒淅(あら)ひたりき
視よ 当来の仲夏の艶楽の幻像の契点(さなか)に
細微(ささや)かなる蠕蟲(はむし)のかくも産卵せるを
燃え昌(さか)る巨巌は蠢動(うごめ)きいで
蒼白(あをざ)めし金鳳花(きんぽうげ)の一房もどよめきたり
ああ 八方の地平をして力あらしめよ
日輪(ひ)は さだかに照りわたり
波もまた銀声を点(てん)ず

喜悦(よろこび)は神に



「冀く」(こひねがはく)は、頼み事や願い事をするときなどに使う、なにとぞ、お願いだから。

「故関」は、夷狄の侵入から都を防衛するために置かれたむかしの関所のことでしょうか。

日本では、646年の大化改新の詔に「斥候(うかみ)、防人とともに関塞(せきそこ)を置け」とあるのによって、伊勢(三重県)鈴鹿関、美濃(岐阜県)不破関、越前(福井県)愛発(あらち)関の三つの関所が設けられました。

平時には国司が警備をしますが、反乱、譲位、天皇・上皇・皇后の崩御、摂政・関白の死去に際しては、朝廷は固関使を派遣して固めさせました。

789年に廃止されてからは、愛発関が逢坂関にかわって三故関といわれたそうです。

「白薔薇の愁訴」つまりバラがつらさを嘆き訴え、「嬰児」つまり幼児は「磔刑」になるというのです。

「蠕蟲」(ぜんちゅう)は、ミミズ、ヒルなど、体が細長く、蠕動によって運動する動物の俗称です。

「金鳳花」というと卵型の愛らしい黄色い花が目に浮かびますが、それが「蒼」ざめている。凝りすぎの感すらある独特の漢字使用が、そうした雰囲気や色彩感を醸し出すのに大きな役割を担っているようにも思われます。

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