2017年4月14日金曜日

内戦へ②

1932年夏ごろになると、スペインでは各地で労働者や教員らのストライキが慢性化、爆弾騒ぎやテロの発生は日常茶飯事となり、もはや市民が日常生活を営むのもままならなくなりました。

同年8月10日には、歩兵第31連隊による共和国政府転覆を目論んだ軍事クーデターがセビリアで勃発。クーデターは結局失敗に終わって首謀者はウエルバ州で捕らえられ、10月21日の裁判で一応の決着をみました。

クーデター鎮圧後の反共和主義活動家への弾圧は大規模なものでした。後にファランヘ党の創設者の1人になったホセ・アントニオ・プリモ・デ・リベラも逮捕されます。

事件を報道した「ABC」などの有力新聞は軒並み押収され、マドリード市内へ近郊の軍隊が送り込まれて政府の主要機関の守備にあたりました。事実上の戒厳令下の状態です。

こうした混乱のなか、マチャードは、哲学的思索にのめり込んでいきます。1924年に出版した『新詩集(Nuevas canciones)』は主に、以前にみた人生哲学的な示唆に富んだコプラや「格言と歌」、覚え書き的な短詩から成っています。

内戦に入って作られた『戦争詩(La guerra 1936-1937)』には、政治的でメッセージ性の強い作品が目立ちます。また、1936年に出版されたマチャードの生前最後の著作『Juan de Mairena』には、次のような記述も見られます。

先生は言われた。虚構と同じように美しいものは、真実のほかにはない。
偉大な詩人は、落後した形而上学者である。
偉大な哲学者は、詩の真実を信じる詩人である。
詩人たちの懐疑論は、哲学を刺激するのに役立つ。一方、詩人たちは大いなるメタファーの技法を哲学者たちから習うことができる。それは、教育的に有効であるとともに、詩の値打ちを永遠のものにする。
Después de la verdad decía mi maestro nada hay tan bello como la ficción.
Los grandes poetas son metafísicos fracasados.
Los grandes filósofos son poetas que creen en la realidad de sus poemas.
El escepticimo de los poetas puede servir de estímulo a los filósofos. Los poetas, en cambio, pueden aprender de los filósofos el arte de las grandes metáforas, de esas imágenes útiles por su valor didáctico e inmortales por su valor poético.


このころのマチャードは、詩人と哲学者は深い関係にあり、偉大な哲学者は詩人であり「詩の値打ちを永遠のものにする」には哲学が必要だと考えていたようです。

もともとドイツの哲学者クラウゼ=写真=の思想を取り入れ、自由主義的知識人を育成することを目指した「自由教育学院」で教育を受けたマチャード。 若いころから哲学に興味をもち、パリで学んだベルクソンからも強い影響を受けたといわれます。

当然、「98年世代」の中心人物であるウナムーノには思想的に深く共感していました。当時、パリへの留学で教えを受けたベルクソンらの影響で、マチャードがどのような哲学にたどり着いていたのかを語る見識は私にはありません。

しかし、『カスティーリャの野』で詩人として一つの仕事を終えた彼にとって、政治的、社会的混乱のなかで純粋に新たなスペインを見いだそうとすれば、哲学的な方向に傾斜していったのは、むしろ自然な流れだったように思われます。

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