2017年4月11日火曜日

「ドゥエロ川のほとりで」に投影された歴史②

広く翼を拡げた ハゲワシが一羽、
空の深い青さのなかを 悠然と旋回していた。
ぼくは見た――はるかに 高く切り立った嶺、
打ち出し模様の盾のような 丸い丘、
朽葉色の大地のうえの 紫の丘、
――さながら 兵どもの古びた甲冑の残骸――、
小さな鋸を想わせる 不毛の丘。そこをぬってドゥエロは流れ、
射手の石の弓さながら 弧を描いて
ソリアを巡る。――ソリアは カスティーリャの塔、
アラゴンまで見渡せる 前哨の町――。
Un buitre de anchas alas con majestuoso vuelo
cruzaba solitario el puro azul del cielo.
Yo divisaba, lejos, un monte alto y agudo,
y una redonda loma cual recamado escudo,
y cárdenos alcores sobre la parda tierra
harapos esparcidos de un viejo arnés de guerra—,
las serrezuelas calvas por donde tuerce el Duero
para formar la corva ballesta de un arquero
en torno a Soria. —Soria es una barbacana,
hacia Aragón, que tiene la torre castellana—.


盾(escudo)、甲冑(arnés)、石の弓(ballesta)、前哨(barbacana)といったメタファーからすると、詩人が見つめているのは、中世のヨーロッパ、イベリア半島中央部にあって、キリスト教国によるレコンキスタ(国土回復運動)を主導し、スペイン王国の中核ともなったカスティーリャ王国の「残骸」であることがうかがわれます。

ぼくは見た――鈍色の丘で、
槲と 樫の冠で 閉ざされる地平線、
裸の岩地、羊が草を食み、牡牛が草にひざまずき反芻する
つましい牧草地、
夏の明るい陽光にきらめく 川縁のポプラ、
もの音ひとつ立てない はるかな旅人たち、
なんと小さな影!
長い橋を渡っていく
――荷車、騎手、馬方――、そして 石の橋梁の下で、
銀色のドゥエロの川面に
落ちる 黒い影。
   ドゥエロは イベリアとカスティーリャの
樫の芯を貫き 流れる。
        ああ、悲しく 気高い大地よ!
高原と 荒野と 岩だらけの大地、
鋤を容れず 小川もなく 雑木も生えない原野、
衰微していく町々、旅籠のない街道、
驚きは顔にしても、踊ることも、歌うことも忘れた 田舎の住人たち、
彼らは 火種の絶えた竈を見限り、
カスティーリャよ、そこを流れる長い川のように、
ただ 海へ向かい 流れていくのだ。
Veía el horizonte cerrado por colinas
oscuras, coronadas de robles y de encinas;
desnudos peñascales, algún humilde prado
donde el merino pace y el toro, arrodillado
sobre la hierba, rumia; las márgenes de río
lucir sus verdes álamos al claro sol de estío,
y, silenciosamente, lejanos pasajeros,
¡tan diminutos! —carros, jinetes y arrieros—,
cruzar el largo puente, y bajo las arcadas
de piedra ensombrecerse las aguas plateadas
del Duero.
       El Duero cruza el corazón de roble
de Iberia y de Castilla.
             ¡Oh, tierra triste y noble,
la de los altos llanos y yermos y roquedas,
de campos sin arados, regatos ni arboledas;
decrépitas ciudades, caminos sin mesones,
y atónitos palurdos sin danzas ni canciones
que aún van, abandonando el mortecino hogar,
como tus largos ríos, Castilla, hacia la mar!

詩は再び、カスティーリャの自然風景へと戻ります。裸の岩地、牡牛が草にひざまずき反芻するつましい牧草地、夏の陽光にきらめく川縁のポプラ、荒野と岩だらけの大地、鋤を容れず雑木も生えない原野、衰微していく町々。そして視線は、火種の絶えた竈を見限る人々へと移っていくのです。

それにしても、マチャードの詩に現れる風景のもつ比類のない「存在感」には驚かされます。

そして再び、スペインの過去と現在の時空を往来し、栄光の過去と失われてしまった現在が対比されていくことになるのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿