2016年5月7日土曜日

ロマンセという形式

アントニオ・マチャードの代表的な詩集『カスティーリャの野』(1912年)には、「アルバルゴンサレスの地(La tierra de Alvargonzáles)」というタイトルの二つの作品が、セットで収められています。

一つはパリの「Mundial」誌の1912年1月号に発表された散文体の物語・伝説「La tierra de Alvargonzáles(Cuento-Leyenda)」。

もう一つは、同じ年にまとめられたロマンセ(romance)形式の韻文「La tierra de Alvargonzáles(Al poeta Juan Ramón Jiménez)」です。

二つは、形式の違いを除くと共通部分が非常に多い作品です。

にもかかわらず、散文によっても、韻文によっても、読者に訴えかけようとしたところには、兄弟による父殺しをテーマにしたこの物語に込められたマチャードの思い入れの深さと、強いメッセージ性を読み取ることができるでしょう。

特にロマンセのほうは、全体で700行余り、詩集の約半数のページを割く畢竟の大作です。


シャルル・ボードレール=写真、wiki=に始まるフランス象徴主義やルベン・ダーリオらのモデルニスモ(近代主義)の影響で詩を書き始め、祖国の近代化を夢見たマチャード。

詩人としての模索の中で、彼はどうしてロマンセという形式にたどりついたのでしょう。また、このような大作を書く必要があったのでしょう。

そして、フランスなど他のヨーロッパ諸国では忘れ去られた、一見すると古くさく時代に逆行しているようにも思えるロマンセという古い形式を使い、赴任したソリアの近くの田舎を舞台にドロ臭くもある物語を書くことに力をそそいだのでしょうか。

そこには、カスティーリャを探るという「98年世代」的な意図とともに、以前に見た「二つのスペイン」に対するマチャードの立ち位置や、社会的使命に裏打ちされた詩人の「戦略」的な志向が関係しているのではないかと私は考えています。

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