2016年5月3日火曜日

形容詞にとらわれない詩

林一郎は、マチャードの初期の3作品(『孤独(Soledades)』のIV、『孤独、回廊、その他の詩(Soledades. Galerías. Otros poemas)』=写真=のLXXVIIとCXLVIIIという番号の詩と、詩集『カスティーリャの野』とを比べて、そこで使われている名詞、形容詞、動詞の数を調べています。


それによれば、初期の3作品の合計は、名詞77、形容詞42、動詞が27。軽蔑、嫌悪されていたはずの名詞や形容詞が非常に多く使われ、動詞は名詞の3分の1、形容詞の3分の2程度と少なく、決して動詞が優位、とはいえないことがわかります。

ところが『カスティーリャの野』になると様相はかなり変わってきます。分析した152作品、総計2823行で、名詞は4445、形容詞1483、動詞2116でした。

①名詞が最も多く、形容詞の3倍、動詞の約2倍にのぼる。②動詞は、形容詞の1.5倍多い。③形容詞は最も少なく名詞の3分の1、動詞の3分の2、という結果になったのです。

もちろん、この比較が統計的に意味をなすものではありません。それに、実験的な作品でもない限り、いくら韻文でも名詞、形容詞、動詞のどれかだけで文を織りなすことは通常はありえません。

だから名詞軽視、形容詞嫌いといってもそれは、程度の差の域を出はしません。

しかし、マチャードが中期以降、特に形容詞にとらわれないで詩を書こうと意識的に努めていた可能性をうかがい知ることはできそうです。

林は「Machadoの場合、まずmodernistaとしての自己の色彩を消すことから始めた。これこそ詩であると思いこんで自らの存在をかけた処女詩集《Soledades》(1903年)を世に問うて批評家の好評を博しながら、それとは逆の方向に自らの詩作の道を転向せざるを得なかった。

その苦しみは想像にあまりある。彼の詩が祖国の大地にしっかりと根をおろしたものに変貌するためには、最愛の少女妻Leonorの死という代償を払わねばならなかった」 と指摘しています。

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